コロナ後にも発症しやすい!慢性疲労症候群の症状と診断基準を確認しよう

現代病の代表的なものとして、蓄積する疲労が挙げられる。過重労働や精神的ストレスにより人はかつてない疲労という問題に直面しているが、この病態や原因が医学的にかなり説明できるようになってきているのだ。朝起きられない、夜眠れない、原因不明の発熱を繰り返す、これらの症状は体からの危険サインであり、れっきとした疾患として私たちの体を蝕んでいる。

さらに近年コロナウイルス感染症罹患後に強い疲労感を訴え、日常生活に支障をきたすケースが相次いでいるようである。強い疲労感によって通勤や日常生活すらままならないといった人は慢性疲労症候群の可能性がある。是非その症状や診断基準を確認しよう。

慢性疲労症候群の診断基準

厚生労働省が提唱する慢性疲労症候群の診断は、大基準2項目を満たし、さらに小基準のうち症状項目11項目のうち8項目以上、もしくは症状項目6項目+身体所見項目2項目以上を満たすことで慢性疲労症候群と診断される。

以下、厚生労働省ホームページより

大基準

生活が著しく損なわれるような強い疲労を主症状とし、少なくとも6ヶ月以上の期間持続ないし再発を繰り返す(50%以上の期間認められること)。

慢性疲労の原因と考えられるような疾病を除外すること

疲労感の程度についてはPS(performance status)を設定しており

0: 倦怠感がなく平常の生活ができ、制限を受けることなく行動できる。
1: 通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、 倦怠感を感ずるときがしばしばある。
2: 通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、 全身倦怠の為、しばしば休息が必要である。
3: 全身倦怠の為、月に数日は社会生活や労働ができず、 自宅にて休息が必要である。
4: 全身倦怠の為、週に数日は社会生活や労働ができず、 自宅にて休息が必要である。
5: 通常の社会生活や労働は困難である。軽作業は可能であるが、 週のうち数日は自宅にて休息が必要である。
6: 調子のよい日は軽作業は可能であるが、 週のうち50%以上は自宅にて休息している。
7: 身の回りのことはでき、介助も不要ではあるが、 通常の社会生活や軽作業は不可能である。
8: 身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、 日中の50%以上は就床している。
9: 身の回りのことはできず、常に介助がいり、 終日就床を必要としている。

このうち、PS3、全身倦怠のため、月に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である。というレベル以上であることが必要である。

小基準

ア)(症状基準)
(以下の症状が6カ月以上にわたり持続または繰り返し生ずること)
1. 微熱(腋窩温37.2~38.3℃)ないし悪寒 
2. 咽頭痛 
3. 頚部あるいは腋窩リンパ節の腫張 
4. 原因不明の筋力低下 
5. 筋肉痛ないし不快感 
6. 軽い労作後に24時間以上続く全身倦怠感 
7. 頭痛
8. 腫脹や発赤を伴わない移動性関節痛 
9. 精神神経症状(いずれか1つ以上)
羞明、一過性暗点、物忘れ、易刺激性、錯乱、思考力低下、集中力低下、抑うつ
10. 睡眠障害(過眠、不眠)
11. 発症時、主たる症状が数時間から数日の間に発現
イ)(身体所見基準)(2回以上、医師が確認)
1. 微熱、2. 非浸出性咽頭炎、3. リンパ節の腫大(頚部、腋窩リンパ節)

厚生労働省(旧厚生省)慢性疲労症候群診断基準

まずはPSを確認し自分の疲労のレベルを確認する。3以上の疲労感を感じているようなら迷わず受診しよう。

慢性疲労症候群に陥るメカニズム

慢性疲労症候群(CFS)の病因としては、これまでウイルス感染症説、内分泌異常説、免疫異常説、代謝異常説、自律神経失調説などさまざまな学説が報告されてきた。

現在分かっていることとして、慢性疲労に関与する要因について以下に述べる。

生活環境ストレスの関与

 慢性疲労症候群の誘引には生活環境要因(ストレス)が関係していることが明らかになっている。大阪大学付属病院に通院中の慢性疲労症候群患者を対象にした研究では、健常者に対して有意にストレスが多いことが明らかとなっている。また、Holmesらの研究においても、自覚症状の有無に関わらず、慢性疲労症候群患者においてはストレスが多いことが判明している。

また、日常的なストレスだけでなく、生活上の変化(ライフイベントの変化)、特に睡眠週間の変化や健康上・行動上の変化、さらに親戚とのトラブル、配偶者との関係まで関与するとされている。

ストレスは、人間関係が主となる精神的ストレスだけでなく、長時間残業などの身体的ストレス、騒音や化学物質、ウイルスや細菌感染などのストレスを総合して考慮する必要がある。

つまり、ストレス源になるものを徹底的に探してみる必要があり、生活自体を根本から見直すことで自分でも気づかないストレス源に気づくこともあるだろう。さらに、遺伝的な背景や感染症、免疫異常や内分泌系、脳・神経系の異常が複雑に絡み合い発症に至るようである。

慢性疲労症候群になりやすい性格

自分の感情に鈍感で、自分の感情を表すことが難しい(失感情症)

完璧主義

オーバーワーク傾向

疲労・倦怠感および慢性疲労症候群の病態 吉原ら

これらに当てはまるようなら注意が必要である。

感染症の関与

診断基準の小基準にもあるように、喉の痛みや発熱などインフルエンザのような症状を認めることや、慢性疲労症候群の集団発生が欧米でみられたことにより、感染症の関与が疑われている。慢性疲労症候群患者で多く見つかる感染症はマイコプラズマやコクシエラなどの慢性感染症であり、免疫力の低下が関連しているものと思われる。

精神的なストレスが免疫力の低下を引き起こすことはよく知られており、精神的なストレスと感染症が絡み合って発症に関与するものと思われる。

脳・神経系の異常

慢性疲労症候群における不定愁訴は脳・神経系の異常とみて間違いないようである。最新のSPECT解析やPET解析では、慢性疲労症候群患者では局所の脳血流の低下を認めている。これにより疲労を感じやすい状態や行動を生じにくい状態に至ることが考えられる。

慢性疲労症候群に陥るメカニズム

以上の知見をまとめてみると、CFSの多くは環境要因(身体的・精神的ストレス)と遺伝的要因が関係した神経・内分泌・免疫系の変調に基づく病態であり、ウイルスの再活性化や慢性感染症によって惹起された種々のサイトカイン異常による脳機能障害である可能性が高い。

厚生労働省ホームページ https://www.fuksi-kagk-u.ac.jp/guide/efforts/research/kuratsune/fatigue/fatigue07.html

だからコロナ後は慢性疲労症候群に注意!

今まで見てきたように、慢性疲労症候群の発症には感染症が関係している可能性が高い。コロナウイルス感染後に精神的なストレスや免疫力の低下が複合して脳機能障害を引き起こし、過度な疲労感を出現させていることが考えられる。

慢性疲労症候群は何科に受診するのか?

まずは総合診療に受診しよう。慢性疲労症候群の診断には、診断基準以外にも、慢性疲労の原因となるような疾患の除外が必要である。血液検査や心電図、尿検査などから腎機能、肝臓機能、心機能が悪くないか、膠原病や内分泌疾患の除外をしてもらう必要がある。

検査の結果、器質的疾患を除外し明らかな慢性疲労の原因となる疾患が無ければ、慢性疲労症候群の専門医へ紹介されることとなる。

さらに、小基準にあるような筋力低下、リンパ節の腫脹や精神症状などは一般人が感覚で所見をとれるようなものでは無く、専門医による診察にて確実に診断に結びつけなくてはならない。素人判断は危険なのである。

慢性疲労症候群とうつの違い

慢性疲労症候群は朝起きられない、意欲が湧かないなどの症状がうつと間違えられやすい疾患であるが、全く別の病気である。脳の機能障害のため、うつのような症状が出現することもあるが、その病態は大きく異なっている。

一番の大きな違いは抑うつ気分の有無である。慢性疲労症候群では体が重いなどの身体症状が強すぎるが故に意欲が低下したり、行動が億劫になったりしているが、体が動けば抑うつ気分は改善する。

また、うつでは感情表現が乏しくなったり、意欲が低下したりしているが、慢性疲労症候群患者ではそこまで表面的では無い。体が動けばもっとできると思われる患者ばかりである。

まとめ

慢性疲労症候群について見てきた。診断基準が一部複雑なので、自分で当てはめるのが少し大変であるが、そもそも診断するのは医師の仕事なので、強い疲労で仕事や日常生活に支障をきたしているのなら迷わず受診しよう。

ただ疲れているだけと、周囲からは怠けている、根性が無いなどと思われがちなこの疾患は、自分の辛い症状とは裏腹に周囲からの理解が得られにくい疾患である。しかし、明らかになりつつあるこの病態が周囲に理解され、適切な休養、治療が受けられるようになれば救われる人は多いはずだ。

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