いきなりテキパキできる
脳の機能を科学的な見地から解説している「めんどくさいが消える脳の使い方」。本書は作業療法士というリハビリの専門家が書いており、めんどくさいという感情を消すための方法が余すこと無く解説されている。
今回はすぐにできて練習もいらない、いきなりテキパキできる7つの方法を解説する。
なぜいきなりテキパキできるのか
めんどくさがりで重い腰が中々上がらない人が多い中、なぜいきなりテキパキできると断言できるのか。
脳は意思決定する際に、その時の感覚データを用いて行動を決定する。簡単なものであれば、お腹が空いた→食べ物を探す、喉が乾いた→コップを手に取るなどである。つまり、脳に入力される体からの感覚データを変えれば脳の意思決定を変えることができる。つまり、行動を変えることができるのだ。
こういったテクニックはリハビリの専門家であり、脳の機能に詳しい作業療法士ならではの発想だ。どのような感覚を入力し、体をどのような状態にすれば良いのか、詳しく見ていこう。
①夕方の体温を上げる
めんどくさいと感じてしまう理由の1つ目は意外な所にある。それは「体温」。やる気の問題では無く、行動する体の温度が低いことが原因である。
風邪はひいていないし、体温は正常だけど?という疑問ももっともであるが、ここで取り上げるのは深部体温である。私たち人間は、深部体温が高いほど体のパフォーマンスが高くなるのだ。
深部体温は、一日で上がったり下がったりするリズムがある。これを概日リズムというが、普段の起床時間の11時間後(7時起床ならば夕方の6時)に深部体温が最高になり、起床時間の22時間後(7時起床ならば朝5時)には最低になる。
起床11時間後は多くの人は夕方から夜になる。多くの人はこの時間はあまり動いていない。この時間帯に動かないということは、深部体温が上がらないと言うことである。この時間帯に深部体温が上がらないと、夜下がるはずの体温が上手く下がらず、夜になっても眠くならない、朝目覚めても元気が出ないなどの症状を引き起こす。
深部体温は体を動かすだけでも上がる他、体を外から温める入浴や食事などでも上がる。著者がオススメするのは週に4日、夕方に1分間のスクワットだ。深部体温のリズムをつくるには、ミトコンドリアが多く含まれる筋肉を増やすことが有効である。骨盤内の筋肉にはミトコンドリアが多く含まれるため、スクワットの動作時にお尻をぐっとしめながら行うとより効果的である。
②その日一番やりたいことを最初にやる
めんどくさい気持ちを消すには、できるだけめんどくさくない時間帯に作業するのがコツである。ちなみに、私たちの脳は、目覚めてすぐが一番行動力が高く、夜寝る前が一番「めんどくさい」と感じるリズムを持っている。
著者が経験した中でインパクの大きいものに、「朝一のメールチェックをやめること」があると言う。
朝一は一日の中で一番脳が働きやすい時間帯であり、メールチェックにその機能を費やしてしまうのはもったいない。朝一はまず自分が一番やりたい仕事にとりかかり、集中して仕上げた後、ゆっくりしてメールチェックをするべきなのである。
私たちは朝出勤すると、いの一番にメールチェックをする習慣がついてしまっている。まずはこれを止めて、やりたい仕事から取りかかろう。継続すれば、行動パターンを作る脳の配線が少しずつ変化してくるだろう。
③両手に違うものを持たない
私たちは仕事に追われてついつい2つ以上の仕事を同時に遂行しようとする。これは、「今どっちの作業をしようとしているのかわからない」と脳を混乱させる命令である。
脳は基本的に省エネであり、1つのタスクしかこなすことができない。両手にものをもつ(マルチタスク)と目にした刺激に注意が奪われ、作業時間が結局増大したり、無駄なことをしたりしてしまう。
重要なことは、シングルタスク=仕事量を減らすではないということだ。マルチタスクをして効率よく仕事をした気になっていても、結局作業時間は増えていることが多い。脳はそんなことができるようになっていないのだ。
効率が良い仕事とは、重要な仕事を短時間で終えるということである。シングルタスクを短時間でこなしていこう。
④次の作業の、最初の工程だけてをつけてやめる
例えば、めんどくさい家事の代表的なものに食後の片付けがある。これをどうするかというと、最初の一枚だけ流しに持って行って洗うのだ。一枚だけで良い。そう思うと以外と行動への抵抗感が薄れて、流しに持って行ける。一枚だけで終わっても良いしが、やってみるとついでに他の皿も洗ってしまおうとなるのだ。
一枚だけで終わったとしても、一枚だけで終わる気持ち悪さがあるので、後でできる確率も高まる。実際にやってみると面白いほどできるようになる感覚があるだろう。
この仕組みは、めんどくさい作業を分解して量を最小単位とし、最初の1つを関連する最後の作業のくっつけると、そのまま保存できる。
これを利用すると、最初の少しの作業だけ手を付けておいて、その後は放っておくということができるようになる。最初だけ手を付けているので、後から触らないのも気持ちが悪いし、何をやるのか少しなりとも考えるので、後で行動できる確率が高まる。
⑤とにかく手で触る
めんどくさいの正体の1つが「わからない」、つまり脳にとって情報不足で予測困難になっているのである。ということは、わかりやすい情報を脳に届けてしまえば、それは脳に通じる命令となる。
脳にとって分かりやすい情報とは、体から入る感覚データ、とりわけ「触覚」と「固有感覚」である。
触覚とは触った感触のことだ。触覚は視覚や聴覚と違って塞ぐことができない感覚であり、何もしていないときでも衣類や座面の感触、空気の流れという情報を脳に届けている。
固有感覚とは、筋肉の動きの感覚のことである。例えば目を瞑って、腕を前に上げ、それを反対の手で触ろうとしたとき、人間はスムーズに手を触れるだろう。これは、目で見ていなくても、筋肉や関節の感覚によって手がどこにあるのか、どのように動いているのかが分かるようになっているからである。
この触覚と固有感覚は自分が今ここに存在している情報、いわゆる「体で感じた情報」である。脳は外の世界を知ろうとするので、触覚や固有感覚の情報が次の行動に繋げるための重要な感覚データになり得るのである。
鍋を洗いたいがめんどくさいとき、とりあえず鍋を触るだけ触ってみよう。触りさえすれば、そのまま鍋を洗ってしまうこともあるかもしれないし、その後で洗いたくなるかもしれない。とにかく触ることが重要だ。
⑥やったことが誰かにつながるのを見る
たとえば、仕事中であればテキパキ必要なことをこなせるし、自分のデスクも綺麗だが、家ではダラダラしがちで片付けも苦手という人がいる。人前では普段よりテキパキできる理由は「他者とのつながり」である。
見られている緊張感が大事なのかと言えば、そうでは無い。関係があるのは緊張感では無く、自分の作業が他人とつながっているという感覚である。
自分の部屋は片付いていないけど、人の部屋の片付けははかどるという現象はまさにこれである。自分が頑張ったことで人が快適に過ごせるだろうという思いが自分を動かすのである。
人は、社会とのつながりで安心を得る生き物だと言う。社会や人とつながることで、心拍数や血圧がちょうど良いくらいに調整され、リラックスして高いパフォーマンスを出せるようになる。なので、自分がこれをすることでいかに人に貢献できるか、人が助かるかという側面で考えてみると、作業ははかどりやすい。
⑦「それができたらこれができる」と言う。
自分をやる気にさせる方法として、ご褒美をあげるということがある。これを脳から見ると、「報酬系を使う」ということになる。脳の報酬系の使い方は以下の2種類がある。
- この仕事が終わったら何をしようかな…と考える
- この仕事ができたら、こんなことができるな…と考える
最初の報酬系は脳の線条体という部位を使用しており、報酬を目指して活動を頑張ることができるのだが、報酬を得られた途端に線条体の活動は低下してしまう。「よし!もうこれでいいや」ってな具合である。
一方2.は前頭前野外側部を中心とした報酬系であり、報酬そのものでは無く1つ先のことが目的になった場合に起動する。こちらの方は、報酬を得られた後も、前頭前野外側部の活動は低下せず働き続ける。
その仕事を終わらせた先に何が待っているのか、1つ先の目標を決めることで継続してモチベーションを保つことができるのである。
まとめ
めんどくさいという感情を消して、テキパキ動けるようになるための方法を7つ解説した。簡単かつかなり実践的で効果のある方法だと思われる。是非実践してみよう。
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