脳には癖がある
「めんどくさいがなるなる100の科学的な方法」の著者である、菅原道仁先生は脳神経外科医であり、脳の機能について一番詳しい職業の先生と言っても過言では無い。
本書は医者らしい多角的な視点からめんどくさいという感情について解説されており、豊富な研究結果をもとに納得のいく内容となっている。菅原先生曰く、めんどくさいという感情は意志が弱いからでも、サボり魔だからでもないと言う。
今回は、脳の特徴や癖からなぜめんどくさいという感情が生じるのか、解説していく。
脳は省エネしようとする
脳はグズをやめられない
私たちの脳はかなり燃費が悪く、脳の重量は体重の2%程度しか無いが、1日に必要なエネルギーの約20%も消費していているという。なので、何とか脳での消費エネルギーを押さえようとして、なるべく体を休めようとする。
というもの、私たちは1日の中で1万回以上、決断をしている。朝着ていく服、朝食の種類、出かけるときの服や靴、それら全てを一つ一つ決断しているのだ。これらの決断によって脳はかなりのエネルギーを消費している。
脳でのエネルギー消費が積み上がっていくと疲労が蓄積し、動くのがめんどくさくなってくる。脳の疲労を回避するためには、決断しなくても良いように、あらかじめ食事や服装を決めておくと決断の回数が減らせる。
制限されると反発したくなる
私たちの脳は雑多な情報であふれ、その中から最適解をみつけなければならない。なので、できるだけ効率よく決断を進めようとする。
これを逆手に取った商法が、限定商法だ。「限定メニュー」、「10食限定」、「今だけ30%OFF」などである。この限定というワードによって、脳は購入という決断をしやすくなっている。
これは、制限を受けると逆にそれをやりたくなるという「心理的リアクタンス」という脳の癖を逆手にとった商法だ。今を逃すと次は手に入らないかもという心理を脳が認識し、勾配という行動を引き起こす。
親や上司から「勉強しなさい」、「この資料を作りなさい」などと言われた場合、我々は基本的に意欲を失ってしまう。これは「心理的リアクタンス」が働いて、指示された行動に反発してしまうのだ。そのため、めんどくさくなってしまう。
勉強や資料作りを言われてやる場合は、「この課題は自分のためにあるのだ」、「上司は自分のためを思って言ってくれているのだ」と思い込むことが大切である。指示されたという感覚から、自分で進んでやる感覚にシフトさせることでめんどくさいという思いを脱することができるのだ。
何をやるもの苦痛でしか無い
脳は1日1万回以上決断をしていると前述した。なので、脳はできるだけ決断をしなくて良いように自動的に判断を処理しようとする。それが習慣である。習慣化した行動は何も考えなくても自動的にしてしまう。
歯磨きや入浴などだ。これが勉強や運動に繋がっていれば良いのだが、たいてい我々は、「帰ったらまずソファーに座ってスマホのニュースアプリを開く、見終わったらSNSを開いてチェック、そのまま時が過ぎて日が変わる頃に急いで入浴」などといった生活が習慣化している。
何かを始めようと思っても、家に帰ったらソファーに座ることが習慣化しているので、何をするのも苦痛でしかなくなってしまっている。いつもの習慣では無いことをするのは苦痛なのだ。
変化が苦痛である状態から抜け出す第1歩は、やはり決断を減らすことである。脳の消費エネルギーを減らし、脳への負荷が減ることで、何か新しい行動をする余裕が生まれてくる。めんどくささが減って行くのだ。
気分やストレスによる脳のふるまい
その日の気分にたやすく左右される
私たちの気分は、将来の行動にかなり影響を及ぼすことが分かっているという。気分が良い時は、何が起こってもポジティブに捉えることができるが、気分が悪いときはかなりネガティブになりやすい。私たちは目の前の現実を気分によって書き換えているのだ。
「もうできない」と思っていると目の前の現実をそういう風に書き換えてしまう。脳は消費エネルギーを軽減させるため、脳に入ってくる情報を無意識のうちに限定している。では、どんな情報が脳に入ってくるかというと、自分が意識しているキーワードが入ってくるのだ。なので、「もうできない」と思っていると、できない理由を探し始めて、現実に当てはめてしまう。結果、できないまま終わる。
まず、「できない」という思い込みの癖を解除する必要がある。
前頭前野はストレスに弱い
前頭前野は人間らしい脳と言われる部分で、創造性や思考、人間性やコミュニケーションに関わり、決断することに重要と言われている。前頭前野のある部分は、自己の抑制に関わる部分で、この部位が損傷すると幼稚な行動をとったり、衝動的でキレやすくなるそう。
そして、私たちが今やらなければいけないことがあるのにも関わらず、先送りという決断をしてしまうのは、前頭前野の活動が低下しているからと言われている。特に、この部分はストレスに弱いので、ストレスにさらされている状況下では、「めんどくさい」という感情から抜け出すのは難しいだろう。まず、ストレスフルな状況下から抜け出すことを考えよう。
しんどいことも楽しいことに変えられる
ストレスには良いストレスと悪いストレスがある。言うことを聞かない子供、乾かない洗濯物などは一般的に悪いストレスだろう。しかし、これらは自分の捉え方次第で良い、悪いが決定されているのだ。
例えば、筋トレは良いストレスの代表的なものである。体にストレスをかけることで、筋肉が増大していく。天気が雨だったり寒かったりするときは、四季を感じられるし、雨が降れば農作物が育っておいしい野菜が食べられるだろう。
このような余裕があれば、一般的にストレスであるとされる出来事も自分にとって良いことだと感じられるようになる。目の前の現実の捉え方を変えるのはかなり自分を鍛えるトレーニングになるし、かなり自分を成長させてくれる。
どんな思い込みを選ぶかでずいぶん変わる
よくある話で、コップに半分水が入っているとして「まだあと半分ある」と捉えるか、「もう半分しかない」と捉えるかで後の人生が変わる。などという話はよくされる。当然まだあと半分あると思える方が良いという話である。
これは、どちらが正解かという話では無く、どのように思った方が自分の役に立つかという視点で考えた方が良い。もう半分しかないと捉えた方が、後々自分が無くならないように努力できそうであればそう捉えれば良いのだ。
自分の役に立つように柔軟に捉え方を変えましょうというのが、「リフレーミング」というテクニックだ。何か気分が落ち込むようなことがあったときに、これがただ自分にとって悪いことがあったというだけでなく、それが後々自分にとって良い影響を及ぼすとしたらどんな状況かと考えても良いかもしれない。
まとめ
めんどくさいという感情が出てくる理由を脳の特性や環境因子から解説した。著者の菅原先生は脳外科医であり、脳機能の観点から説明してくれるので、めんどくさいという感情の理由が事細かにわかるのでは無いだろうか。なぜ、めんどくさいという感情が出てくるのか、勉強しておこう。
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