めんどくさいが消える脳の使い方

脳と行動の専門家である作業療法士の渾身の一冊!

私達の日常にはめんどくさいという感情があふれている。これがあるからせっかく立てた目標が頓挫し、計画がうまく行かなくなるのだ。

これに対峙するために必要なのは、気合と根性ではない。科学的な戦略であると著者は言う。

著者である菅原先生は作業療法士というリハビリの専門家であり、人間が行うあらゆる作業を上手くやるための戦略を立てるのが仕事だという。

身体機能が低下して呼吸をすることが困難になってしまうならば、呼吸筋と肋骨の関節の状態を改善させて、脳の呼吸中枢に伝達される情報を変えて呼吸を深くします。脳の一部が損傷して思うように体が動かないならば、脳内の神経の配線を変えて、新しいルートを使って体を動かせるようにします。

つまり、めんどくさいという感情を消し、新たな行動の選択ができるように、科学的に有効と思われる方法を教えてくれるのがこの本だ。

脳に通じる命令と通じにくい命令

脳に通じにくい命令

例えば、人前でスピーチをするとき、「緊張しないようにリラックスしよう」と言い聞かせるのは「脳に通じにくい命令」であるこれは、リラックスするために何をすれば良いのか不明確だからである。

脳に通じる命令

それに対して、「今日は前に来た小学生二説明するように話してみよう」と言い聞かせるのは「脳に通じやすい」命令である。

前にやったことのある行動を思い出してやればいいので、どの記憶を呼び出して脳から体に命令すれば良いか明確になる。

このように、場面に合わせて、どのように考えれば体が動きやすいのか、行動を起こせるのか、脳の機能を前提に教えてくれるため、この本は非常に説得力のある本となっている。

「めんどくさい」は脳が予測できなくて生じる

めんどくさいという感情は、無駄にエネルギーが使われたり、使えるエネルギーが少ない時に出現するという。特に、今の状況や未来の姿が「わからない」時にはめんどくさいと感じる。

①難しい予測を必要とする時

例えば、友人の結婚式に参加するのがめんどくさいという時、脳の立場から表現すると「どうすればいいのか、何が起こるのか分からない」ということらしい。

この場合、初めてのことが1つでも減ると、行動のイメージができてきて、めんどくさいという感情が減ってくる。

②生命維持を最優先するために、使えるエネルギーが極端に減らされた

例えば、今週中に提出しなければならない資料を作るのがめんどくさい。これは、脳の立場からは「罰が怖くて動けない」ということらしい。

自ら望んで作る資料では無く、間に合わないと怒られると感じると、罰を受けることを意識してしまう。その時、脳では自分の安全が侵されると感じ、自律神経のひとつである背側迷走神経系の働きにより、危機を回避して安全を確保することが最優先になる。

そうなると、体は代謝率が下がって動かなくなり、危機が過ぎ去るのを待つモードになってしまう。やる気は当然出ない。

この場合は、その資料がどのように人に役に立つのか、自分のやりたいこととどう繋がるのかを自分の中で整理しておくこと。そうすれば、資料作りが自分のやりたいこととなり、体はリラックスできるという。これは腹側迷走神経系という先ほどとは逆の作用を持つ神経の働きによる。安全であることが分かれば、体は高いパフォーマンスを発揮できる。

③資源の奪い合いで1つの課題に使えるエネルギーが減らされた

例えば、早く丁寧に家事を終わらせたい場合、早くする時間的な能力と、丁寧にする空間的な能力の2つが脳に要求されている。これが脳にとって負担になるという。

このようなときには、1つの能力だけでできる状況をつくると良い。早く終わらせたい場合は、丁寧にしなくても良い状況を作る。そうすることで、一気にめんどくささが薄れる。

実は、時間的な能力と空間的な能力は脳の中で資源の奪い合いを起こしているらしい。なので、早く丁寧にやりたいときは、工夫してみよう。

脳の特性を把握する

意識して使える脳のエネルギーはたったの5%

人間の脳において、自ら意識して行動や思考したときに使えるエネルギーはたったの5%以下だと言う。では残りの95%は何をしているのか、それは、「無意識で行う活動」に使われている。

無意識で行う活動とは、これから起こることを予測して備えたり、記憶を固定または消去したり、自分で意識せずに脳が勝手に行っていることである。

脳は常に予測する内臓

たとえば、スーパーの閉店の音楽はみんなが聞き馴染みのある音楽で特に意識しなくても違和感なく聞くことが可能である。しかし、急に音程が外れたり、知らないメロディーに変わっていたりすると、理解不能だとして、脳の聴覚野が次の領域に検索をかけにいく。それでも理解不能であればさらに次の領域で処理できないか情報を送る。

このように脳の中は説明のつかない意味不明な情報で溢れており、無駄にエネルギーを使っている。

世の中が変わるタイミングに注意

脳は基本的に同じ毎日の繰り返しだと予測する。しかし、4月は新しい環境、新しい人間関係が生まれやすい時期である。

4月は、自分の生活スタイルを何も変えていなかったとしても、いつも視聴しているテレビやラジオのキャスターが変わったり、新聞に新しいコーナーができたり、いつも利用しているサービスの担当者が変わることがあります。こうした予測と異なる刺激に遭遇すると、脳内では理解不能な情報のたらい回しが始まります。

始めのうちは気分が高揚し、わくわくしたりもするが、理解不能な情報が各領域を回っていくため、エネルギーコストがかさみ、ただただ疲れていく。

「めんどくさい」で悩む人たちは、新生活になったタイミングで新しいことを始めがちなのだとか。新生活で脳の消費エネルギーが増大し負荷がかかっている状態で新しいことを始めようとするとさらにエネルギーを消費するため、脳が疲れ、行動できなくなりめんどくさくなる。

新しいことを始めるときは、世の中が変わるタイミングと自分を変えるタイミングをずらそう。

脳の消費エネルギーを節約する

現代において私たちの脳を疲れさせる2つの問題がある。それはデジタル作業とマルチタスクである。ちょっとした隙にスマホをみて脳に情報を入力する。すると脳はそれに対応して処理していかなくてはならない。分かりやすい情報なら良いが、理解できないものは次の領域、さらに次の領域へと情報のたらい回しを始め、脳のエネルギーコストはかさんでいく。

傍からみれば何も出ずスマホを出して触っているだけなのに、脳は著しく疲労し、何もやる気が起きなくなっている。

また、脳はマルチタスクができるようにはなっていない。より正確に表現すると、やろうと思えばできるのだが致命的に作業時間が遅れ、結局マルチタスクをしていないときより時間がかかっている。

時間が余計にかかる上に脳への負荷は増大するのだ。できる限りマルチタスクは避けよう。

まとめ

脳の特性からめんどくさい感情をできるだけ起こさせないような工夫をみてきた。やはり作業療法士という専門家が解説するだけあって、脳の機能と実際の生活が上手い具合にマッチしている。是非試してみて欲しい。

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